作法


タイでは、食事は普通スプーンとフォークで行なわれる。持ち方は、右手にスプーン、左手にフォークだ。

使い方は、たとえば皿に盛られたご飯を食べる場合は、まず右手のスプーンでご飯の塊を、むこう側から手前へと軽く崩す。そして、待ち構えていた左手のフォークの背で再びご飯をスプーンの中へ押し戻し、口へ運ぶのだ。このようにして、基本的に食物を口へ運ぶのはスプーンの役目であって、フォークは首尾一貫して補助的役割に撤している。

ちなみに皿の上でのスプーンの動かし方だが、このようにあくまでもむこう側から手前という方向で、西洋料理のスープを飲む際のように、スプーンを皿の手前からむこう側へ向かって動かすことは、この国ではとても不作法なこととされているらしい。

また、少し大きな何かの塊を小さく切り分けたい場合には、その塊をフォークで押さえ、スプーンをナイフのように使って切り分ける。しかしこの場合も、食物を口へ運ぶのはあくまでもスプーンの役目であって、フォークに食物を突き刺して口へ運ぶということは普通ないようだ。

だが基本的に、このようにわざわざ切り分けなくてはならないような料理はほとんどない、と言っていいだろう。タイ料理も、日本料理や中華料理と同様、食材はおおむね事前に食べやすい大きさに小さく切り分けられているのだ。西洋料理のように、皿の上で大きな塊を、自ら刃物で切り分けながら食べる料理ではないのである。