謎謎


ZENの修行の中で、師が弟子を悟りに導くために出題する謎謎、それが「公案」である。公案は、偉大なる先人の言動や行動を記録した『無門関』や『碧巌録』『臨済録』といった書物から出題されることが多く、そんな数ある公案の中のひとつ『南泉斬猫』とはこんな話である。

中国唐代の高僧、南泉が寺へ帰ると、東と西の堂の修行僧たちが、1匹の猫を取り合い言い争っていた。南泉はすかさず彼らの中へ分け入り、その猫を取り上げ彼らに向かって言った。

「いったいお前たちは何をしていたのだ。お前たちが今すぐ道にかなった返答をすればこの猫は救おう。だが、お前たちがもし道にかなった返答ができなければ、直ちにこの猫を真っ二つに斬り裂いてやる」

しかし、誰ひとりとして返答できる者はいなかった。そこで南泉は、手に持った太刀で猫を真っ二つに斬り裂き、彼らの前へ投げつけた。

その日、夜になって南泉の高弟である趙州が寺へ戻ると、南泉は昼の出来事を彼に話して聞かせた。すると趙州は、履いていた草履をぬぎ、それを頭の上にのせると、そのまま黙って部屋から出て行った。南泉は言った。

「ああ、あの時お前がいれば、猫は斬らずにすんだ」

南泉はなぜ趙州がいれば、猫を斬らずにすんだのか。禅の超難問『南泉斬猫』の答えは?