2010/07/20

名前


















 この世には名前のないものはないのだと、妙なことを言った人がいる。すべてのものは普く、好ましい名前を持っているというのだ。だが、それはとんでもない間違いである。名前など、もともとないのだ。

〈主なる神は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれをどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった〉(旧約・創世記2-19)

 これは『旧約聖書』の創世記の中の、アダムが生き物に名前を付ける場面だが、そもそも名前を付けるという行為は、人間がそれを支配することを意味していたのだ。それはもちろん、生き物に限ったことではない。山や川、大地、そして集落や都市、国家にしてもしかりである。

 我々人間は常に、名前を付けることによって、あらゆるものを支配してきたのだ。